2023年6月17日 吉野本葛について新聞各社で掲載いただきました。
2023年6月17日 吉野本葛について新聞各社で掲載いただきました。
絶やさない「くず粉」製法150年
共同通信社様の取材で吉野本葛をとりあげていただきました。
「吉野本葛」は日本の伝統産業ですが、どれくらいの方がこの名前を知っているのでしょうか。
そしてどれくらいの方が吉野本葛を食べたことがあるのでしょうか。
天極堂は1870年の創業以来吉野本葛を作り続けておりますが、日本人の葛粉作りはもっと昔にさかのぼります。
まだ食べ物が十分にない頃、薬と食の区別はなく、葛は空腹を満たし生きるために食べ、また養生するために食べられていました。
貧しい山では冬になると山に入って葛の根を掘り、葛粉を作り、干して保存食として蓄えました。そして十分な食料がない時に葛粉で飢えをしのぎました。救荒食です。それは生きていくための先人の知恵でした。
出前授業に行って葛の根を見せると、「はじめてこれ食べた人すごいなぁ」というのがたいていの子供たちの感想ですが、そんなことを言っていられないくらい当時はみんな飢えていたのです。そしてイノシシなどが葛の根をかじっているのを見つけ、これは食べられる植物だということを学び、可食部だけを取り出す方法として叩き潰して水で晒して沈殿させるという方法を徐々に確立していったのでしょう。
葛粉作りの最盛期は江戸時代です。日本各地で葛粉が作られていましたが、特に天極堂のある奈良県で作られる吉野本葛は最高級の料理用でんぷんと言われました。
しかし、最高級の料理用でんぷんと言われつつも、奈良の人達にとっての吉野本葛は風邪をひいたり病気をしたときの療養食であり、戦争中は戦地に行く人に滋養食や携帯食として葛粉を持たせるという一面もありました。
その後生活が豊かになり、ライフスタイルも変わる中、葛粉に替わる澱粉(甘藷澱粉、輸入澱粉など)が出てきたこともあって需要が減り、産地が減り、掘り子も減ろうとしています。
それでも吉野本葛は日本の文化です。
葛は私たち日本人が生まれる前からこの土地に存在し、人々の暮らしと共にあった植物です。
葛粉は薬にも料理にもお菓子にもなる食べ物で和食文化を支えている食材の一つです。
だからこそその文化を守り、次の代にも伝えたいと思っています。
その為に、出前授業で葛に見て、触れて、味わってもらう活動をしています。
葛ソムリエを育成して葛を好きになってくれる人、深く学んでくれる人を増やそうとしています。
まだまだうまく行かないけれど栽培にもチャレンジしています。
葛由来の乳酸菌についても研究を進めています。
ぜひこれからの葛にご注目ください!