掘った葛根で葛湯を作るイベントを開催しました!

三光丸様とポニーの里ファーム様にご協力いただきまして、
葛を探し、掘り、潰して実際に葛湯にして飲むことをメインイベントに、葛を使ったお料理をみんなで作ったりクスリ資料館や天極堂の工場見学をしたり一日葛づくしのイベントとなっております。

1、三光丸様の敷地内で葛根掘り

まず、A班・B班に分かれ、三光丸様の敷地内にある雑木林で葛根を掘らせていただきました。
雑木林のなかから葛根がある場所を探します。
葛は春に新芽を出し、夏に旺盛に伸び広がり、秋に花を咲かせますが、冬である今は地上部は全て枯れ落ち、目印はありません。
ですが、木化したつるは黒い幹になっています。
黒いつるを探し、その周辺を掘り進めていきます。

A班・B班両チームの協力により、大小さまざまな葛の根を掘り出すことが出来ました!
さて、ここからが本命。
果たして、澱粉を採ることはできるのでしょうか…?

2、三光丸クスリ資料館の見学

もう一つのチームと入れ替わり、三光丸クスリ資料館の見学へ。
資料館は浅見館長がご案内くださいました。
「三光丸」奈良では知らない人はない和漢の健胃薬。そして社名も商品名と同じく「三光丸」。
三光丸の「三光」は、日(じつ)・月(げつ)・星(せい)の光を意味していて、名付け親は後醍醐天皇。
三光丸は食べ過ぎ飲み過ぎから、食欲不振まで胃腸の不調を緩やかに回復してくれるので、常備薬として重宝されています。
今回は特別に原料倉庫も見せていただきましたが、三光丸では生薬を植物のままの状態で仕入れ、自社で粉末に加工し、三光丸を作っているとのこと。
原料倉庫にはセンブリ、オウバク、ケイヒ、カンゾウの4種類が原料のまま、あるいは粉末やエキスになって保管されていました。
そしてクスリ資料館。
資料館では薬に関係の深い推古天皇、役小角、鑑真和上、後醍醐天皇にまつわるVTRを見た後、実際に三光丸に使われている生薬やその他の生薬を見せていただきました。
長い長いイッカクの角は必見です。

資料館内には、昔使われていた薬を作るための道具を実際に触ることが出来るコーナーや、三光丸のパッケージの歴史などが展示されています。
三光丸の類似品(名前がちょっと違ったりしていました)のパッケージなどが展示されているのも面白いなと思いました。

3、天極堂の工場で葛根の粉砕、揉み出し&葛クッキング&工場見学

掘りだした葛根を、天極堂の工場に持って帰ってきました。
葛の匠の協力のもと、みんなで掘った葛根を粉砕機を使って粉砕していきます。
粉砕した葛根の繊維に絡まるようにして、白い澱粉「葛澱粉」がついています。

この澱粉をとるため、たらいで洗います。
写真のように液がミルクティーのようになれば、澱粉がある証拠です。
もしも何度もみ洗いをしてもブラックコーヒーのような色であれば澱粉はほぼないと思われます。

大きい繊維をとる→ざるで濾す→布で濾して別の桶に移します。
うつし立てはミルクティーのような色をしていますが、数時間静置しているとでんぷんが沈殿して上澄み液はブラックコーヒーのような焦げ茶色になります。

本来は2日ほど置いてしっかりと沈殿させますが、今回は日帰りイベントだったので、3時間ほど静置しただけ。
でも、桶の底にはちゃんと澱粉がたまっていました。
また、本来はここから吉野晒の製法で10日から2週間かけて何度も撹拌→沈殿→水の入れ替えをくりかえしながら洗っていきます。そうすると、澱粉は茶色から白色になり、土臭さや苦みがなく、白いダイヤモンドとも呼ばれる「吉野本葛」が出来上がります。

参加者全員で協力してランチを作りました。
本日のメニューは「吉野うどん」と「胡麻豆腐」。
葛が練り込まれた葛うどんに、吉野本葛でとろみをつけたおだしをかけた「吉野うどん」。
身体を芯から温めてくれるおうどんです。
「胡麻豆腐」はねりごまと吉野本葛とお水を使って練り上げます。
練れば練るほどおいしくなる胡麻豆腐ですが、今回は短めに5分、練り上げていただきました。

ランチが終わったら、今度は天極堂の工場見学。
2班に分かれて、吉野本葛が精製されている現場と、乾燥&箱詰めを行っている現場を見ていただきました。

その後は、デザート作り。
「葛まんじゅう+古都華」を作っていただきました。
奈良県産いちごの古都華(ことか)をのせて、お召し上がりいただきました。

4、掘った葛根からとれた葛粉で葛湯作り

今回は底の方の液を上澄みごと炊き上げて葛湯を作りました。
お鍋で混ぜているとつやつや、とろとろ。
ただ、まったく精製していないので、土くさくて苦みもあって、決しておいしいものではありません。
この茶色い部分に含まれるのはイソフラボンやリグニンなどポリフェノール。
皆様にスプーン1杯ずつ、食べていただきました。
去年の葛湯よりは苦味が少なく、色も薄かったので少し食べ易かったかなと思います。

今年もイベント開催のために三光丸の米田社長、浅見館長、ポニーの里ファームの保科様、スタッフの皆様に本当にお世話になりました。
皆様のご協力のおかげで、今年も無事イベントを開催することが出来ました。
今年は朝から雪が降っていましたが、昼から暖かくなり、無事最後までイベントを行うことができました。
この場を借りて、皆様に感謝申し上げます。

日本の伝統食材である『吉野本葛』。
これからもみんなで、吉野本葛を次世代へ伝えていきたいと思います。

後日談 ①くずのつるでかごを編む

実はみなさんが一生懸命葛の根っこを掘っている間に、スタッフ川本はこっそり葛のつるを採取しておりました。
で、後日、葛のつるでかごを編んでみました。

縦芯にするためのつるをカットしたら、十字に芯を置き、横糸になるつるをくるくると芯の前、後、前、後と巻いていきます。底がもういいかなと思ったら、縦芯にしているつるを少し立てるようにして横のつるを編んでいき、好きな大きさにしたら終わりを適当に差し込んで終了。縦芯を横に曲げながらかごの外から中に刺し込んだら、取っ手をつけて完成。
今回は葛のつると言っても地面の中に伸びていた、ほぼ根っこのような部分をとったので、素直にまっすぐ伸びていて面白みがなかったため、取っ手に細いつるを巻き付けて葛らしさを表現してみました♪
きれいに造花を飾り付けてもらいましたが、お家に飾るなら本物のお花がベスト。でも、植木鉢を置いてもいいし、小物を入れてもいいです。
いらなくなったら土に還るので、とってもエコ。

後日談 ②残りのでんぷん乳を精製し、葛粉を作る

みんなで掘った葛の根はその日のうちにつぶし、水でもみだし、取れた澱粉乳はそこの濃い部分を皆さんにお持ち帰りいただきましたが、その日の最後に飲む葛湯作りに使った残りの液からも葛粉がとり出してみました。

既に沈澱した澱粉を採った残りの液なので、上澄みを流すと底にうっすらでんぷんが残るだけでした。
そこに水を加えてでんぷんを混ぜてビンに入れ、冷蔵庫で再び沈澱。
取り切れていなかった微細な汚れはお茶パックを使って漉して、また沈澱。
上下の微細な不純物を取り除いて乾燥させたら、葛粉の完成!!!
私の手元に残ったのは10gの吉野本葛です。
体験された皆さんはどんな葛粉ができたでしょうか?

他にも、持って帰った根っこを煎ってからお湯で煮だして葛根茶を作った方、上澄み液を湯船に入れて入浴剤にされた方など皆様葛を満喫してくださったようで何よりでした。