掘り子さんに葛の根を掘る技術を教えていただくため、山に葛根掘りに行きました。

今日はずっとお世話になってきた掘り子さんに葛根掘りに連れて行っていただきました。
私たちは吉野本葛の精製から販売まではしていますが、葛の根を掘るのは掘り子さんのお仕事であったことから、葛根掘りの知識や経験がありません。
そこで、今回は伝統産業の記録動画の撮影が主目的ですが、現場の環境、道具の使い方、葛の根がどっちに伸びようとしているのか(掘る場所)などを見て、勉強させていただきました。

1枚目の写真は、掘り子さんと今回収穫した葛の根です。
もう引退されていますが、急な斜面をすいすい登っていくし、まだまだ私たちよりも掘り進める速度が早く、道具の使い方、体の使い方は経験がないと若さだけでは太刀打ちできないことを思い知りました。
2枚目は葛のつる(地上部)の写真。
葛粉を作るための葛は山の日当たりの良い南側の急斜面に生えているものがよいと、江戸時代の農学者、大蔵永常の書いた製葛録にもあるように、本当に超急斜面!しっかりした木を選んでつかまりながらでないと、滑り落ちて上に進めないくらいです。
でも、平のところに落とし穴を掘るようにするよりも斜面を切り崩した方が掘りやすいので、これくらいの斜面がいいというのはよくわかりました。
葛は頭がいい植物で、高い木に巻き付いて日光を求めて光合成をするというだけでなく、その木を締め殺して倒し、その後倒れて腐ったときにその養分を吸うためにその木の下に根をはわせ、また次の木に巻き付くのだそうです。

今回案内していただいた場所はまさに『葛パラダイス』だと思うような場所。掘り子さんとっておきの秘密の場所だそうで、見渡す限り葛!
葛が枯らせたからか他の木はそれほど密集しておらず、すすんぼも少ないから掘りやすかったです。
赤土で、根があって、その下が石になっていたのですが、葛は水の多すぎる場所を嫌うから、水捌けがいいのもいい根が掘れる場所の特徴なんだそうです。
また、掘ってみなくても、大きな葉っぱが落ちている場所は葛が大きく育っている証拠でもあるので、そういう部分から判断して少し掘ってみて、鎌を入れて、でんぷんが詰まっていることを確認したら最後まで掘り起こすのだそう。
平らなところに落とし穴を掘るようにするのではなく、斜面を切り崩すように結構な広範囲を削り落とす感じで掘ります。

良い葛の根は紡錘形と言ってボーリングのピンのような形をしています。掘り進めていって、下の方がきゅうっと細くなっていたらのこぎりでカットして掘り出します。
今回は撮影目的だから、本気の葛根掘りではないので、3箇所だけ掘りました。
1箇所目はまぁまぁ。2箇所目は空振り。3箇所目はかなりの大きさのを掘ることができました。掘り子さん曰く、小ぶりだけどしっかり澱粉の詰まったいい根っことのこと。男性5人で3箇所掘って、撮影しながら約3時間。素人だけでは葛を見つけることも難しいのですが、掘り子さんにご案内、ご指導いただいたおかげでよい体験をさせていただくことができました。

これからも大切な葛の根を、心を込めて精製し、吉野本葛の文化を守っていきたいと思います。