「葛を原料から製品まで知り尽くす」

葛男プレゼンツの葛掘、葛粉作り体験会に参加しました

葛男プロジェクトで鹿児島の髙木久助社長と葛男たちと一緒に葛根掘りをして来ました。
【葛男】葛と出会い、葛に魅せられ、葛を守りたいという熱い想いを持つ人たち
【髙木久助社長】秋月葛を守る廣久葛本舗の10代目久助
今回の目的は奈良と鹿児島の違いを学ぶこと。たった4回ですが奈良で葛根掘りをしたので、鹿児島との違いを知りたかったし、「葛の本」制作時に取材させていただいた髙木社長にまた会いたかったし、ゆっくりお話しを聞きたかったのです。

今回は堀子の池田さんの指導で山に入れていただきました。入った山は下の方から直径10センチはある葛がポツポツとあって、葛が多いという印象。もちろん鹿児島に葛が特別多いのではなく、そういう場所に連れて来てくださっただけで、堀場を探すのも熟練の池田さんだからこそ。
葛のつるは黒く、白いのは他の植物。また葛のつるは右巻き。あとは地面に葛の葉が落ちていることなどが葛根探しのポイントです。

また、真っ直ぐツルが伸びてるのは根が真下に伸びてる可能性が高くて掘りにくいのだそう。ツルの入る向きを見極めて掘りやすく大きな葛を選ぶのが仕事(掘り子)として効率的に葛の根を掘るポイント。
あとは、基本的に『崩れたら困るような場所』は掘ってはいけないと教えていただきました。私はいつも車で高速道路を走っていたり、新幹線の車窓を眺めていて葛を見かけたら「掘りたいな〜」って思うけど、そういう場所はダメってことです。当たり前だけど言われるまで気づきませんでした。

そしていざ葛根掘り。池田さんはパッと見ただけで葛の根がどのむきに伸びているか、どのあたりを掘ればいいかわかるようで、葛のツルを眺めたら、そこから少し離れた場所を掘り始め、すぐに根が顔を出しました!!!

今回は葛根掘りイベントなので、池田さんに教えられた場所を自分たちで掘っていきます。鹿児島の山は、ふかふかの柔らかい土で雨が降ってても掘りやすいように思いました。ご一緒した女子二人がパワフルで、ガンガン掘り進めていきます。
根は二叉に分かれ、それがまた三叉に分かれてという感じで、太そうな方を選んで掘り進めてみて、時折テコの原理で葛根をゆすって根の伸びる方向を確かめながら掘っていきます。
はじめは黒い土でしたが途中でオレンジっぽい土にかわり、これはいい土や!と池田さんが教えてくれます。

どんどん掘るけど根を完全に掘り出せるわけではないので、根をゆすって先が細くなれば切り取ります。どこまで掘るか見極めるのも大事だそう。
ノコギリで切ってやっと一本!「とれた!」と感動していたら、「こっちも大きいから掘るよ」と池田さん。一本で終わりじゃないのねって、今度はほぼ真下に伸びる根を掘っていきます。深く掘るには周りから広げないといけないから、足場を作りながら周りを削って穴を広げたら次は根に沿ってスコップを刺してまたガンガン掘り下げます。時折葛根をゆすって、揺れが大きくなればもう大体掘れたという合図だからノコギリで切る。さっきの根よりまだ大きい根が掘れました。
6歳の女の子も参加していましたが、その子がすっぽり入ってしまうほどの大きい穴ができていました。

よく掘ったよね…って思っていたら、「こっちも掘れる」と、横に伸びる根を掘り始める池田さん!!!
葛根掘り、エンドレスです。
横に掘るのはトンネルを掘るみたいにスコップを横に刺して、上を崩しつつ、横に横に穴を掘ります。
本当はまだもう少し伸びているはずでしたが、半分くらい掘れたところで時間終了。でも、一つの個体から大中小と3本の根が掘れて、大収穫でした。

山から工場に戻っていざ計量。
髙木社長のところでは葛根を買い取っているので、電子秤があり、葛根を持ってきた重さによって買取しています。
鹿児島近辺にお住まいの方は、葛根を掘ったらぜひ売りに来てください。
今回のイベントでは私たちの他に2箇所掘っていたのを合わせて、参加者6人半と葛男4人と池田さんの10.5人が2時間かかって掘った葛根は34キロでした!
前日に葛根を納品に来た方は1人で半日で168キロだったことを思うと、堀子への道はまだまだ厳しそうです。
でも、葛根掘りは宝探し☆
山に眠るまだ見ぬお宝を自分の手で掘り出した時の感動があると思います!

さて、葛根が掘れたら髙木社長の出番です。
まず葛根を水で洗ったら、粉砕機で潰します。
江戸時代は平たく硬い石の上に葛根を置き、お餅つきのように木槌で潰していましたが、今は機械を使います。繊維状に細かく潰すことで繊維に絡まる澱粉が取り出しやすくなるのです。

潰した葛は水で揉み出します。
ゴム手袋を用意していたのですが、繊維の細かさを確かめたり、澱粉の感触を確かめたいので思わず素手で手をつけてしまったら、皆さん素手で洗い始めました。
葛を晒すのは水仕事なので手が荒れると思われがちですが、葛のお仕事をされている方は手がきれい。それはやっぱり葛に含まれる成分のおかげではないかと思うのです。

さて、繊維に絡まる澱粉をしっかりと洗ったら、液はカフェオレのような白濁した茶色になります。
白濁しているのが澱粉が含まれている証拠です。
繊維を絞って取り除いたら、網で漉して、澱粉乳を沈殿させます。

本当は2~3日おいてしっかり沈澱させるのですが、イベントは時間がないので、数時間経過後をみんなで観察しました。すると、バケツの底にはちゃんと葛の澱粉がたまっていました!
今回のイベントはここまで。
ペットボトルに葛液をいただき、各自持ち帰ります。
上澄み液は入浴剤としてお風呂に入れるもよし、クラフトコーラを作るもよし。
そして沈殿した葛澱粉は数回水を替えながらあらえば、葛粉の出来上がりです。

イベントはいろいろと手作業で行いましたが、本来、廣久本葛の鹿児島工場では大きな水槽があり、澱粉を取り出しています。

これが桶にたまった本葛。
返しという作業をしたら、取れた澱粉は鹿児島県から福岡県の秋月に送り、秋月で仕上げの精製を行い、ようやく廣久本葛となります。
「南で原料をとったら北に移動して精製する」というお話を伺いながら「渡り鳥みたいだな…」と思いました。
最初から最後まで奈良で完結する吉野本葛と、少し違いますね。

今回は工場で本葛を売っていただきました!!!
廣久葛本舗は当たり前ですが天極堂のライバルです。
髙木社長にも「天極堂にも葛はいっぱいあるでしょ」って突っ込まれましたが、何でも勉強ですので、思わず大容量で購入してしまいました♪
福岡県秋月のお店、もしくはオンラインショップでもご購入いただけますので、天極堂の吉野本葛と違いを比べてみるのも面白いと思います。
10代目高木久助の本気の葛粉を、ぜひみんなでいただきましょう!
廣久葛本舗オンラインショップ→https://www.kyusukekuzu.jp/

また、葛男である相田さんが立ち上げた「タイヨウノカオリ」では天極堂の吉野本葛を使った、地球にもお子様にも優しい商品を販売されています。
肌が敏感だった娘さんと、家族みんなで乗り超えてきた相田さんだからこそ作れた商品が、たくさんの想いと共に紹介されています。
肌や睡眠でお悩みの方はぜひお試しください。
タイヨウノカオリオンラインショップ→https://taiyonokaori.com/

1300年以上前、日本の創成期から存在し続ける葛

地球にも体にも優しい葛

そんな魅力あふれる葛を、もっともっと見直しませんか?

天極堂では2012年から「葛ソムリエ」をいう資格制度を作りました。
吉野本葛の魅力を伝えたいという思いから始めましたが、2017年からは「葛の本」出版にあたり全国各地を取材し、また今回葛根掘りや九州での生成方法を教えてくださった高木久助社長、葛男のみなさんとお話する中で、吉野本葛だけでなく、世界中の葛を知りたいし、利用したいし、伝えたいと思うようになりました。
その為にはみなさんの力が必要です。
「葛ソムリエ」には天極堂のお客様はもちろんですが、九州の製葛業者さん、葛を研究する大学の先生方、葛を駆除する業者さん、食にかかわる方々(マクロビ、薬膳、食生活推進員などなど)がいらっしゃいますが、もっともっとこの活動を広げていきたいと強く思います。
この1年、自称「葛女」のみなさんとの地上部の活用を夏に行い、自称「葛男」のみなさんと地下の根を掘り出し、たくさんの葛仲間とお話する中で思ったことがあります。
「葛ソムリエは葛の魅力を伝える活動をする」としていますが、葛の魅力を伝える活動っていろんな方法があるよねって言うことです。
私みたいにどっぷり葛に惚れ込んでしまった場合は、歴史も薬効も食べ方も地上部も根っこもありとあらゆることを知りたいし体験したいと思うし、伝えたくなります。
でも、できることをできる範囲でそれぞれがすればいいよな、という結論に至りました。
こうやってブログを読んでくれるだけでもいいし、もしも内容を覚えていたら何かの機会にちょっと誰かに伝えてくれたらうれしい。自分でお料理できるとなおいいけど、お店に来た時だけ葛を食べるというのも悪くない。葛根掘りなんてとてもじゃないけどできないっていうのなら、葛糸でアクセサリーを作ってもいい。葛の花の絵を描いて葛という植物があることを伝えてくれるのも素敵です。
なにせ認知の低い葛ですが、ちょっと「葛って言う植物がすごいらしいよ」ってささやくだけでも、今の世の中検索でどんどん情報が出てくるから、「ささやき担当」なんていう人がいてもいいと思います。
ここまで読んでみて、「葛に興味がわいた!」という方は、ぜひ第一歩として「葛ソムリエ」になってください。葛にまつわるいろんなイベントを開催しますので、ご一緒できるとうれしいです。