天保の頃、頼山陽は、葛練りの作り方を記した一書を添えて、母の病気見舞いに葛粉を送ったと言う。
胃腸の弱い者は夏バテに悩まされる。
医者から「二、三日は安静に」との忠告と何がしかの投薬を受けて、食の進まない数日を過ごすことになる。
そんなときに昔は固めに練った葛粉のお世話になったものだ。
冬もまた葛湯がよい。喉元を過ぎる葛の感触とよく効いたショウガの味は、風邪を一気に追払ってくれそうだ。
神戸大学名誉教授 津川兵衛